不要不急の外出自粛が呼びかけられてからの1年、全国の整形外科で骨粗しょう症を診断される患者が激増したという。骨の強度が下がり、骨折しやすくなる病気で、従来は加齢に伴い症状が表れるケースが多かったが、最近は若い世代の受診も増えている。
急増の理由と、治療と予防の考え方とは。VICTORYクリニックが2年前から注目してきた細胞治療の有効性はあるのか。
幹細胞治療をリードしてきたアヴェニューセルクリニックの辻医師と、お茶の水セルクリニックの齋藤医師に伺った。
■ステイホームで増えた骨粗しょう症。原因は?
ー外出自粛ムードが広がってからの1年、整形外科を受診する患者が増えたというのは本当でしょうか?
齋藤医師(以下、齋藤):骨や関節の痛みを訴える患者が全国的に増えています。今までなんの症状もなく過ごしていた人が、いきなり背骨を折るといったケースもあるようです。
ーその原因が運動不足ということですか?
齋藤:急増の理由の一つではあると思います。骨密度は、運動によって骨に負荷がかかることで高まります。たとえ遺伝的な疾患によって骨が弱い方であったとしても、日々の運動動作によって、骨折には至らない骨密度が維持されることも多いのです。そうした方が運動量を減らすと、骨が一気に弱くなり、体中あちこちの骨が折れ始めるということも考えられます。
ー通勤通学、買い物など外出程度の運動であっても、骨の健康維持には重要だったのですね。
齋藤:私を含め多くの整形外科医が、適度な運動の大切さを実感したと思います。4月23日に4都府県で3度目の緊急事態宣言が発令されましたが、飲食や必要以上の会話を控え、マスクをして散歩程度に近所を歩くくらいであれば感染リスクは低いと考えられます。お茶の水セルクリニックに訪れる患者さんにも、まず運動習慣の改善をお願いしています。
ー適度な運動に加え、骨粗しょう症予防に有効な手立てはありますか?
齋藤:ビタミンD不足は、骨粗しょう症患者のほぼ全員が抱えています。その大きな原因の一つは、日光に当たる時間が短いことです。ビタミンDは、太陽の光を浴びることで皮膚からも合成されます。外出自粛により家にこもることが多くなったことで、負の相乗効果が生まれてしまったとも考えています。